2022年03月08日(火曜日) 18:49 報道特集・ドキュメント

【震災特集】石巻から全国に広がるカーシェアリング ~兵庫が結んだ支援の絆~

東日本大震災から3月11日で丸11年を迎えます。

日本カーシェアリング協会代表理事で姫路市出身の吉澤武彦さんです。10年前、被災者に車を貸して共有するカーシェアリングの取り組みを始めました。その取り組みと、活動を支える福崎町の企業を取材しました。

カキやサバなど豊富な海の幸に恵まれた宮城県石巻市。東日本大震災では3553人【直接死3277人 関連死276人】が亡くなり、417人が行方不明です。(2021年10月末現在 宮城県・宮城県警調べ)約2万棟の建物が全壊し、被災者は、避難所から仮設住宅、復興公営住宅へと移りました。石巻ではすべての入居者が仮設住宅を離れるまでに約9年かかりました。

(2016年撮影 藤岡勇貴リポート)
石巻で失われた車は6万台と推定されています。仮設住宅の周りを見てみますとスーパーがないんですね。車を必要とされている方がたくさんいらっしゃいます。

仮設住宅のほとんどが中心街から離れた場所にあり、買い物や通院など多くの人が車を必要としていました。

(2016年撮影 高齢者の送迎ボランティア)
バスもここだと1日3往復しかないのよ。バスにも乗れないし、バスの停留所も遠いしね。

被災者が生活するためには車が必要ではないか?

車を共有して活用するカーシェアリング事業を石巻で始めた人がいます。

(2016年撮影 日本カーシェアリング協会 吉澤武彦代表理事)
車は集めるのは最初は特に大変でしたね。最初は車がたくさん止まっている会社みたら車くださいって飛び込んで行った。

姫路市出身で日本カーシェアリング協会 代表理事の吉澤武彦さん。広告代理店に6年間勤務していましたが、退職後、ある人からの提案が吉澤さんの人生を変えることになりました。

阪神淡路大震災のボランティア団体 神戸元気村元代表の山田和尚さん(2015年に63歳で死去) 。東日本大震災から1カ月後、山田さんは、自身を慕ってくれていた吉澤さんを呼び出し、これから被災地で車が必要になると訴えました。

(吉澤さん)
(山田さんから提案されたのは)今避難所にいらっしゃる方はいずれ仮設に移ると。仮設に移ったら行政主導で自治会が形成され、自治会長が選出されると。いろいろな支援団体が自治会長に支援を提案していくようになるからその提案内容をカーシェアリングという形でできるように今から準備していったらどうかと。

吉澤さんは仮設住宅でアンケート調査を実施。被災者が車を共同利用するカーシェアリングの重要性を実感しました。神戸に本部を置いて2011年7月、組織を法人化。無料で提供してくれる中古車を集め、石巻を拠点にして被災者に車を貸し出しました。

(2016年撮影 石巻市の復興公営住宅で暮らす女性)
すごく便利でいいです。長く続けてほしいなと思います。

利用者は、何人かで車を共有して無料で借りることができますが、燃料代や保険料など維持費は共同負担します。カーシェアリングの取り組みは、岩手、福島へと広がり、その後は西日本豪雨や九州豪雨など全国に広がりを見せました。

(吉澤さん)
本当にありがたい限りです。気が付けば600台です。全部もらいものですけどね。

このうち81台の車を無料で提供したのが兵庫県福崎町のエーモン工業。自動車のメンテナンス用品を製造・企画・販売している会社です。

(エーモン工業 川岸浩二社長)
カー用品という形の商品を扱っていますので、何か車に関係することで社会貢献したいなという気持ちがあったものですから。車で恩返しができる、困った人を助けられる。

知人の紹介で同郷の吉澤さんが石巻で奮闘しているのを知った川岸社長。西日本豪雨をきっかけに自ら近隣の車屋を回り、提供してくれる中古車を探したそうです。

(福崎町の車屋を回る川岸さん)
いっぱいいろんなところ断られたけどね。中農さん1番最初に協力いただいたんでほんま助かったなと。中で話を聞いてもらえたのはここが初めてです。もう門前払いだったので。

中古車を買い取って車検代もすべて負担し、車を日本カーシェアリング協会に提供。社員らとともに、被災地の岡山県倉敷市真備町まで車を届けました。

(川岸社長)
おじいさんが車を持って行った時にありがとうと言ってくれて手を握ってくれた時にはもう正直、来週も来ますと言ってしまったんで。翌週も車を用意して持って行った感じですね。

役員会を開き、会社の事業の一環で台風や豪雨被害など毎年車を提供し続けました。

(事業の連絡責任者 堀専務)
役員会でことし何台出せるか決めている。

エーモン工業と日本カーシェアリング協会は支援体制を強化しようと2021年7月、災害協定を締結。災害の多かった2019年には、当初の予算を上積みして35台を提供しました。

(堀専務)
少しずつ日常を送れましたと。どこのコメント見てもありがとうございますということが書いていらっしゃるので、そのことが私たちの支えになっております。

(吉澤さん)
地元の企業にこうやって応援していただけるというのは何よりも心強いし、励ましになります。

災害時に限らず、生活困窮者や移動が困難な地域の人にも車を貸し出していて、その取り組みを地元の大学生や多くの企業が支えています。

(吉澤さん)
一時の支援に終わるんじゃなくて石巻にしっかりとしたひな形をつくりたいと思ったんですね。寄付でもらった車を使った社会貢献、支え合いの仕組みを石巻につくって、そこから石巻から広めていく。寄付いただいた方にとって、車を目一杯活用するということが恩返しかなと思いますので。

石巻で産声を上げたカーシェアリング事業。現在は、九州にも支部を置き、熱海、久留米、人吉など全国に活動拠点が広がっています。

日本カーシェアリング協会は車の提供を呼び掛けています。車検が6カ月以上残っていること、安全、快適な走行ができること、タイヤのスリップサインが出ていないこと、使用できないと判断した場合は廃車にしてリサイクルすることに同意してもらえることが条件です。

廃車にする車も無料で受け付けていてリサイクルして活動費用に回すそうです。詳しくは、日本カーシェアリング協会 電話番号0225―22―1453までお問い合わせください。

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